2016年10月19日水曜日

アクションカメラ RICOH WG-M1 試用レポート


予告通り,山カメラとして購入したばかりの「RICOH WG-M1」の試用レポートを投稿する.

★★購入に関するデータ


★購入目的

  • 目的:山行時の静止画・動画記録撮影

★購入理由

現行のスマホによる静止画・動画撮影には,限界がある
  • 気温が高いと高温警告が表示され,カメラが起動できない
  • 気温が低いとカメラが起動できても,作動しない.またバッテリーの起電力が弱まるため,スマホがオートシャットダウンする
  • 湿度が高いと,カメラが正常に作動しない
  • カメラが作動しない場合,スマホを再起動しなければならない
  • 手袋をしたままでのカメラ操作が困難
  • 山行後半は,モバイルバッテリーで充電しながらの撮影となる
  • 衝撃・落下・水没時に,壊れる可能性が高い

★日付と購入店

  • 注文日:2016年10月8日
  • 配送日:2016年10月10日
  • 購入店:Amazon Japan

★注文商品(カメラ+SDカード)

1) RICOH WG-M1 オレンジ

  • 販売:Amazon Japan G.K.
  • 価格:¥ 17,759
  • コンディション: 新品

2) Transcend microSDHCカード 32GB Class10 (無期限保証) TS32GUSDHC10E (FFP)

  • 販売: Amazon Japan G.K.
  • 価格:¥ 1,080

★購入金額

  • 商品の小計:¥ 18,839
  • 配送料・手数料:¥ 350
  • 注文合計:¥ 19,189
  • 割引:-¥ 1,238
  • ご請求額¥ 17,951

★価格コムWG-M1最低価格

★★カメラに関するデータ

★★テスト環境

  • 日付:2016年10月15日
  • 時間:6:00~15:20
  • 場所:静岡市葵区大山ハイキングコース
  • 標高:80~870m
  • 天候:快晴,降雨なし
  • 気温:17度前後
  • :ややあり

★★テスト方法

  • バッテリー:満充電状態から使用
  • テスト手順:山行時に静止画と動画を撮影
  • 撮影手順:電源ボタンを2秒押しして,毎回電源をオン・オフ
  • 動画撮影設定:1280×960(50fps),画角=WIDE,風音低減なし
  • 静止画撮影設定:デフォルト(14M,画角=WIDE)
  • カメラ装着:付属カラビナストラップでザック左ショルダーベルトのD環に装着し,さらに同D環にカラビナ装着した厚手の袋に収納

★★テスト結果

  • 静止画撮影枚数215枚
  • 動画撮影本数24本
  • 動画撮影時間合計:28分16秒
  • 最終バッテリー表示:満充電表示のまま

★★試用レポート

★バッテリーと固定焦点

まずテスト終了時に,バッテリー表示が満充電表示のまま全く変わらないことに驚いた.ただしこれは,バッテリーが新品であり,エイジングもしていないため,誤表示である可能性もある.

バッテリー公称値は以下の通り
  • 静止画撮影:約350枚(専用バッテリー使用)
  • 動画撮影時間:約150分(専用バッテリー使用)
バッテリーに関しては,もう少しテストする必要があるだろう.ただ本機のバッテリー消費が少ない理由として考えられるのは,固定焦点カメラであることだ.

つまりオートフォーカスに関わるモーター駆動,フォーカス検知,メカ制御の電力が不要ということだ.メカニカルな機構が少ないことは,同時に故障も少ないことを意味する.だが当然,パンフォーカスとなり,ボケ味などを出すことは出来ないため,味のある写真や動画を取ることは出来ない.しかし記録用途としては問題ないと言える.

★広角での使用が基本

他の方が書いたレビューにあるように,このカメラは広角(静止画:約160°,動画:約137°)で撮影することが前提となっているようだ.例えば,静止画の画角設定を「Mid.」に切り替えても,電源を切ればデフォルトの「Wide」に戻ってしまう.他の設定は電源を切っても維持されるのにもかかわらずである.

つまりこれは意図的に「Wide」を使用するように仕向けているとしか思えない.

実際,画角が「Wide」以外だと画像が荒くなったように見える.光学的機構によるのではなく,広角で撮った画像を内部でデジタル処理して,擬似的に広角以外の画角を生成してる可能性が高いように思う.

さてその広角はというと,もはや魚眼レンズに近い感じだ.

レンズ仕様は以下の通り
  • レンズ構成:RICOHレンズ 6群6枚(非球面レンズ2枚使用)
  • 焦点距離:35ミリ判換算 約16.8mm
  • 明るさ:F2.8
このため撮った画像・映像は自然な感じにはならず,かなり周辺部がデフォルメされたものとなる.しかし記録用途として割り切った場合,画像・映像内の情報量がむしろ多く,またブレも発生しにくいため,好まれる可能性はあるだろう.

★接写,露出補正,HDRはできない

問題となるのは,被写体との距離を60cm以上取らなければならない点だ.マクロ機構もないため,接写は出来ない.山行中,花の写真などを撮りたい場合は,別のカメラを携行することになる.

また本機にはフラッシュやLEDライトもない.そのためISO800まで自動増感するものの,夕暮時,曇天時や暗がりでの撮影は厳しいかもしれない(下画像参照).ちなみに露出補正やISOの設定など,露出に関する設定は一切ない.

ISO100

ISO800

またこれも他の方が指摘しているように,強いコントラスト処理がなされており,特に動画撮影において白飛び・黒つぶれが目立つ.残念ながらこのコントラストに関しても設定項目はない.やはり記録用途と考えるべきなのだろう.

ちなみに本機にはセルフタイマーも撮影モード設定もなく,パノラマ撮影はもちろんのこと,HDR静止画撮影もできない.

★動画のフレームレート

今回のテストでは,動画を1280×960(50fps)のみで撮影した.仕様ではフルHDの1920×1080では,フレームレート30fpsとなっている.しかし事前の簡易テストで30fpsは出ていないように見え,視聴に目が疲れる気がしたため,最初から1280×960(50fps)を採用した.

1280×960(50fps)は,フルHDの左右をトリミングして,処理負荷を小さくし,その分フレームレートを向上させた感じだ.確認はしていないが,概ねこの解像度で30fpsぐらいは常に出ていると思う.

1280×960(50fps),YouTubeスタビライズ不使用

ちなみに本機は,848x480(120fps)というハイスピード動画撮影も可能だ.撮影可能時間は1分間のみで,再生は4倍スロー(30fps)となる.山行では使用しないと思い,今回のテストでは割愛したが興味深い機能だ.

★上面液晶モニタは便利

さて次に操作性.今回は袋に入れ,胸にぶら下げて使用したのだが,取り出し→撮影→収納のシーケンスが極めてスムースに行えた.袋に入れず剥き身で使用するのであれば,このような手順は省けるのだが,レンズプロテクターがあるとはいえ,傷は気になる.

ちなみに本機のレンズプロテクター「O-LP1531」は,RICOHのネット直営店で販売していないようだが,大きな傷がついた場合,取替のため別途入手可能なのだろうか?

収納袋から取り出した後,カメラが胸の少し下あたりに来るように,カラビナストラップの長さは調節されていた.そのため,レンズを被写体に向けた時に,本機の上面液晶モニタを無理なく覗き込むことができる.この点は高く評価したい.

ただし残念ながら液晶モニタは30秒で自動消灯してしまい,消灯までの時間を変更する設定項目もない.再表示するためには電源ボタン等を押す必要がある.30秒以上の長さを持つ動画撮影テスト中に,何度か液晶を再表示したいケースがあり,電源ボタンを押して再表示を行った.この撮影動画を再生してみると,この時のボタンのクリック音が結構な音量で録音されてしまっていた.これに関しては今のところ対策が見当たらない.

ちなみに液晶消灯後,カメラの電源が入っているかどうかは,電源ボタン横のLEDが,録画時には赤く,アイドル時は緑に点滅するので,把握可能.


撮影における一連の動作を可能にした付属のカラビナストラップのカラビナは,登山用ではないものの軽量型のものが採用されており,これも好感が持てる.

★工夫された操作ボタン

撮影操作の殆どは,左手親指があたる本機左側面の2つのボタン(動画/シャッターボタンと電源ボタン)だけ済む.このボタンは視認しなくても,親指の感覚で判別できるように工夫されている.

動画/シャッターボタンは,出っ張っており,電源ボタンより大きく,表面がザラザラしている.逆に電源ボタンは,やや奥に引っ込んでおり,動画/シャッターボタンよりも小さく,表面はほぼ滑らかになっている.

この工夫により,グローブをしたまま操作することも困難ではないようだ.実際,下山時ゴム張り軍手をはめたままで操作したのだが,特段支障はなかったように思う.ただし厚手の防寒グローブやグローブ数枚重ねの場合は,操作が難しいかもしれない.

今回のテストでは,撮影開始・終了の度に毎回電源ボタンを2秒長押しして,電源をオン・オフして使用した.これにより電源をオンのままにするよりも,大幅にバッテリー消費を抑えることが出来たのだと思う.しかし電源オンの直後は,必ず動画撮影モードとなるため,自分のように静止画撮影がメインのユーザーにとって,毎回のようにやらなければならない動画撮影から静止画撮影へのモード切替(右側面の真ん中ボタンを押す)は煩わしく感じた.



本機の用途は,動画撮影がメインの前提なので,殆どのユーザーには問題ないと思われるが,できたら設定項目を設けて,デフォルトの撮影モードを切り替えられるようにして欲しいところだ.

2秒押しと撮影切替操作を回避する方法の一つは,自動電源オフ機能(液晶消灯後,60秒経つと電源を落とす)を無効にして,ずっと電源を入れっぱなしにしておくことだ.ただし,今回のテストの前に行った簡易テストでは,この方法ではやはりバッテリー消費が激しく,全く撮影しなくても3時間ほどでバッテリーが上がってしまったように記憶する.

できたら,電源ボタン長押しの秒数を0~5秒ぐらいまで設定でき,またデフォルトの撮影モードも選択できると良かったと思う.

★重さや大きさのもたらすメリット

本機は他のアクションカメラよりも,やや重く感じるかもしれないが,この重さがおそらく安定感をもたらし,動画/シャッターボタンを押す時を含めた,手ブレの発生を少なくしているのではないか?また容積も他機種に比べて大きくかさばるようだが,左手にしっくりと馴染む感じで,ホールド感が大変によい.これも手持ち撮影時の安定感につながっているように思う.

動画撮影においては,自動的に電子式手ブレ補正も働くが(注:オフには出来ない),この安定感と広角レンズの効果も加わって,撮影した動画のブレは大変少なくなっていると思う.

ただしウエアラブルカメラとして,ヘルメット等に装着するには,この重さと大きさはやや問題がありそうだ.ちなみに本機のヘルメット用マウント「WG ヘルメットストラップマウント O-CM1536」は,レビューによるとストラップが短く,山ヘルメットには対応していないようだ.おそらくウエアラブル山カメラとしての使用は,想定されていないのではないだろうか?

★★総評

端的に言って山カメラとしての本機は,好天山行時の「記録」動画を,手持ち撮影する道具として,大変コストパフォーマンスの良いカメラと思う.ただし雪山に関してはテストしてないので要注意.快晴の場合,雪が激しい白飛びとなる可能性も否定できない.

改良を加えてもらいたい部分は,概ねソフトウエア部にある.ファームウェア更新等によって,設定項目をいくつか増やしてもらえれば,より素晴らしいモデルになると思う.

ただしすでに後継機種WG-M2が発売されているため,ファームウェア更新は期待できないかもしれない.

ちなみにこの,4K(3840x2160,30fps)動画撮影に対応した後継機種WG-M2は,本機よりもさらに広角のレンズが採用され,焦点距離は35ミリ判換算で14mmとなっている.また露出補正やスポット測光も可能となり,ISO感度は最高6400,被写体にも20cmまで接近できるようになった.本機の弱点がそれなりに改善されているようだ.

ただし有効画素数が800万となっており,本機よりも小さくなっていることには要注意だ.静止画撮影も当然8M以下となる.

重さ・大きさについては,手ブレや操作性とのトレードオフがあると思う.1グラムでも減らしたいUL山行者に,本機を推奨することはできない.

色々と割り切りが必要であるが,その割り切りが可能な山行者にとっては,本機は値段も手頃な「良い山道具」としてオススメできると思う.

なお今回のテストでは実行不可能な耐久性・信頼性に関しても,すでに発売から2年が経過しているため,ある程度のデータがネット上のレビュー等に掲載されている.軽く読んだ感じでは,水中使用メインのケースを除き(パッキンに問題ありか?),概ね良好のようである.

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