★追記(2016/9/29)
本投稿本文中に,『智者山と天狗石山は,松浦理博「安倍山系(三分冊)」に掲載されていない』という記述があるが,実際には記述があったため,お詫びするとともに訂正させていただく.
智者山までのルートは,松浦理博「安倍山系 下」の智者山ルート①.智者山から天狗石山までのルートは,上掲書の智者山ルート⑦に天狗石山ルート①を加えたものとなる.
本文中に,未知の山として記載した「猿見石山(116m)」についても上掲書に掲載されており,天狗石山から猿見石山までのルートも,天狗石山ルート⑧として記載されている.
★概要
- 日程:2016年6月27日
- 天候:晴れ,天狗石山山頂気温: 20.3℃
- コースタイム:
自宅発3:15→湯島大橋着5:45→八草登山口着7:15→智者山着10:15→休憩15分→智者山発10:30→天狗石山着11:30→休憩1.5時間→天狗石山発13:00→反射板着13:10→八草登山口着15:00→地元の方との会話30分→湯島大橋着16:40→休憩10分→湯島大橋発16:50→自宅着18:50 - 総行動時間:13時間(自転車:2.5+2時間,山行:5.5+3時間)
- 休憩時間:2.5時間
- ルート:奥藁科山歩きマップ,八草登山口→智者山→天狗石山→反射板→八草登山口
★写真(317枚)
★動画(12本)
★ 感想
前回登った益田山と七ツ峰.その登山口にあった「奥藁科山歩きマップ」には,「安倍山系」には掲載されていない「天狗石山」と「智者山」の位置とCTが記されており,自分の興味を引いた.
七ツ峰山行の経験から,おそらくこの2つの山へのルートも,七ツ峰と同じく標識がたくさんあり,危険箇所など殆ど無いはずだ.だとすれば,手元にルートに関する資料がなくとも,迷うことなく目的を達成できるだろう.
またマップに記されていたCTから,この山行には,ほぼ七ツ峰と同様の所要時間がかかると推測された.ネットでさらに情報を集めてみたところ,その推測はほぼ裏付けられた.八草登山口から登るルートに関する情報はなかったが,おそらく問題はないだろう.そう思い,前回同様の計画を立て,梅雨の合間を縫うようにして出立した.
行きの自転車行のルートは 前回と全く同じで,疲労の具合も全く変わらず,やはりきつく感じた.しかしながら少しだけ前回と変わったことが起こった.その第1は,車道に転がっていたタヌキの死骸に出くわしたこと.おそらく夜中に道を横切ろうとして,車に轢かれたのだと思う.タヌキの死骸に出くわすのは,これで2回めだ.
実はその後,タヌキにはもう一度出会った.今度は生きたタヌキで,早朝の人気のない南アルプス公園線を横切っているところだった.ちょっとほっそりとした個体だった.どことなくのんびりとした歩き方だったので,生物種としてやはり車に轢かれやすいのかもしれない.
次に車道で出会ったのは,トビ(ワシ?)とカラスだった.場所は湯ノ島温泉近辺だ.前方に2羽の鳥がいたのが見えた.一羽は明らかにカラスだが,もう一羽はカラスよりも一回り大きく,しかも羽が明るい茶色をしていた.その大きな鳥は,2mぐらい離れてじっとしていたカラスを見つめていた.カラスは逃げるわけでもない.膠着状態なのか?
自転車が近づいていくと,まずその大きな鳥のほうが飛び立ち,藁科川の上を自分の後方へと飛んでいった.自分は自転車を止めて,その飛翔を追ってしばらく眺めていた.その大きな翼の羽ばたきは,ゆったりとしていて,しかも羽の後方がやわらかな感じがする.いつも見ているトビのような,忙しい羽ばたき方ではなかったため,もしかしたらワシではないかとその時思った.大きな鳥が飛び去った後,カラスも飛び去っていった.
湯島大橋の近くまで来ると,車道の真ん中に今度は焦げ茶色の大きな鳥がいた.こちらは鷹だったのかもしれない.自分が接近すると羽ばたいて,飛んでいってしまった.その後も動物との出会いは続くことになる.
湯島大橋に到着すると,そこからは八草に向かうため徒歩で林道を行く.その途中の道沿いの山側斜面に小さな 堰堤があり,少しだけ水が流れていた.その前に二頭のシカがいた.水を飲んでいたのかもしれない.自分の接近に気づいたシカたちは,白いおしりを見せながら,林道の坂をすごい勢いで駆け上がっていった.相変わらずの素晴らしい運動能力に自分は舌を巻いた.
そこからさらに林道をひたすらに上がっていくと,途中の分岐で指導標を発見した.オマケにその横には、篤志家による案内図まであった.安心して,その指示通りに林道を歩いて行く.
結局,1.5時間ほど車道を歩いて八草登山口に到着.予想通り,そこには大きな「奥藁科山歩きマップ」があった.これなら登山道にもいっぱい標識はあるだろう.
その場で少し休憩してから山道に入る.するとわずか数mでいきなり分岐となって,戸惑った. どうやらどちらかが前方に見える民家の生活道らしかった.できたら民家の敷地に入りたくなかったが判断できず,とりあえずわかりやすい民家へ向かいそうな道を選んだ.
案の定,道は民家の前に続いていた.どうやらその先は,民家の敷地内を歩かねばならないようだ.今までにも民家の敷地内に登山道が通っている例はあったが,いつもながら気が引ける.しかし他に登山道らしきものは見当たらないので,そのまま直進し敷地内に入った.
民家のドアの横を通り過ぎる時,ドアの外側からダイアル式の南京錠がかかっていることに気づいた.どうやらこの家は空き家らしい.そう言えば先ほど車道にあった篤志家作成の案内図には,「八草(廃村)」と記されていた.ガセかと思ったのだが,どうやらその情報に間違いはないようだ.下山時に地元の方と話をしたが,やはり八草は廃村との事だった.
空き家の前を通りすぎて山道に入る.標識やテープに導かれながら,その登山道を登っていったのだが,予想以上に道は荒れていた.人があまり歩いていない感じがする.思えば八草登山口に至るまでの道の一部が,落石に覆われていた.一般的に八草登山口までは車で来る登山者が多いと思われるが,あれでは車が通るのは難しいかもしれない.となるとこのルートから登る登山者は,現在では稀なのかもしれない.
枯れ葉が厚く堆積した荒れた道は歩きにくいだけでなく,体力をも消耗する.そのためなのだろうか,一部では道が2本並行していた.適当に歩きやすい道を選びながら上っていく.
小展望地を通り過ぎて,しばらく行くと意外な標識が現れた.
「*→」
なんと水場の標識だ.奥藁科山歩きマップには,このルートに水場があるとは記されていなかった.今回携行している水は3.5リッターで,真夏体制より0.5リッター少ない.やや水不足が心配だったが,水場があるのならば安心だ…
…いやいや,そんなことよりも,水場があることがわかっていれば,これほどの水を運び上げる必要はなかったということじゃないのか…
…ちょっと損をした気になったが,「これもトレーニングの一環」と自分を納得させた.
道なりに歩いて行くと丸太橋とともにその水場が現れた.それは小さなワサビ田跡だった.近くにCTの記された官製標識もある.虫も思ったより少なく,心配されたヒルもいないようだった.休憩にはうってつけの場所だったが,先を急いでそこは通り過ぎることにした.
水場の直後に伐採地が現れた.少しだが展望もある.ご丁寧に伐採地にも官製標識が立っているため, 道迷いはない.ただむき出しの斜面の一部から,沢のように水が流れ出ている場所があり,登山道をひどくぬかるませていた.靴内部への浸水に注意して進んでいく.
伐採地を抜けると再び林の中に入ったが,そこには私製の標識があり,近道が記されていた.ちょっとした誘惑に駆られたものの,安全第一でそのまま公式ルートを行くことにした.
さらに歩いて林道を横切ると,今度は鬱蒼とした薄暗い檜林に入った.この林の中にも官製標識はちゃんとあったのだが,登山道から作業道が何本も伸びているので,引き込みには注意が必要だ.
薄暗い檜林を抜けると,開けた小さな平坦地に出た.すぐ先に林道も見える.どうやら奥藁科山歩きマップに「眺望良し」と記されたいた場所のようだった.ここで少し撮影をしたのだが,嫌な虫の襲来を受けた.大きな黄色いアブだ.自分の汗に誘われたのか,執拗に足元に取り付いてくる.撮影はそこそこに切り上げて,先を急ぐことにした.
平坦地から林道を道なりに数100m歩くと,林道からの登山口についた.ここで休憩を取りつつ,虫対策として森林香を焚く.
登山口からは重機も入れるほどの広い作業道を歩いて行く.するとすぐに太めの檜の幹に,「登山道→」と赤ペンキで力強く書かれた大きな文字が,自分の目に飛び込んできた.その先には丸太階段も見える.指示通りに階段を登っていったが,結局すぐに作業道に合流し,戻されてしまった.登山者が作業のじゃまにならないように作られたバイパス道なのだろうか?
作業道の次は,檜林の中を延々と上っていく山道だ.ここから山頂までは,官製標識と木に塗られた赤ペンキがガイドとなった.
檜林がようやく終わり,広葉樹林帯に入ったしばらくすると,ついに智者山への分岐点に出た.ここからは,天狗石山へのルートをいったん離れて,智者山山頂への分岐ルートを行くことになる.
智者山山頂には,そこからすぐに到着した(CT:5分).広葉樹を主体とした林の中にある平坦な山頂で,風通しも良く,少しだが眺望もある.ありがたいことに丸太を四角形に組んだベンチすらあった.虫も少なめで,気持ちの良い場所だ.
この時,時計は10:15を示していた.自分はこの山頂がかなり気に入ったので,本日はここで終わりにしようかと本気に思った程だった.そう思った理由は実はもう一つある.
標高が1291mと,普段登る山よりも低めであるにもかかわらず,疲労感がかなりあったためだ.ただこの時点では,計画ギリギリで天狗石山山頂には間に合うはずだった.自分は決断を迫られた.
休憩を取りながら漠然と思いを巡らせたが,結局,智者山山頂では,15分ほど休憩し.そのまま天狗石山に向かうことにした.面白いことに,(またこれはよくある事なのかもしれないが)疲労感そのものが,自分を先へと進ませた.もしここで撤退したら,天狗石山には再び同じルートで登ることになり.この疲労感をもう一度味わうことになる.それが嫌だったのだ.その時には,「この近辺の山々は本日で終わりにしたい」という思いが確かにあった.
智者山山頂から先ほどの分岐点まで下り、そこから尾根道を歩いて行く.尾根は広いが,道がはっきりしている上に,樹の幹に塗られた派手な赤ペンキがずっとガイドしてくれるため迷いはない.アップダウンも少なく,展望こそないが広葉樹の中を気持よく歩いていくことが出来た.
1時間近く歩いたところで,天狗石山という名前の由来となった「天狗石」への分岐に出た.天狗石をみるためには,尾根から少し下る必要があり,標識には+5分のロスと書かれていた.少々迷ったがせっかくなので「天狗石」を確認してみることにした.
山腹の道をしばらく歩くと,官製の説明板とともに,コケで覆われた天狗石群が斜面に現れた.すでにネットで写真は見ていたのだが,大体イメージ通りの石群だった.昔の人には,これらの石の存在が不思議に思われたのだろう.ただ自分は今までの山行において,これよりも規模の大きな同様の場所をいくつか知っていたため,写真を撮るとすぐにそこを後にして,山頂に向かった,
10分ほど登ると天狗石山山頂に出た.展望はなく,広葉樹の中にそれはあった.ありがたいことに,山頂にあった三等三角点標石の手前に,コンクリ製のベンチが備えられていた.早速それを使わせてもらい,休憩をとった.
天狗石山山頂はやはり虫が多い.植生のためなのか,コバエよりもアブのほうが多かった.尺取り虫も多く,ザックやポーチによじ登ってくる.セミもけたたましく絶え間なく鳴いている.山頂の気温は20度ほどだったが,風が吹いているため,汗が冷えて寒く感じた.例によって雨具を取り出し,防寒する.
山頂で1.5時間休憩したのだが,今回は都合により,睡眠時間が1~2時間ほどだったため,うつらうつらベンチに座りながら居眠りをしてしまった.標高の割に疲労感が強かったのは,この睡眠不足のためだったのかもしれない.
休憩後,下山を開始する.この山頂近くには展望地があるので、そこを経由することにした.展望地までの道も,赤ペンキと標識が引き続きガイドをしてくれる.
その展望地は,反射板の設置されていた場所にあった.残念ながら思ったより,展望は開けていなかった.反射板によって展望が遮られている部分も多いような気もする.ただしこの展望地への道は,ここで終わってはいなかった.
標識が立っていた.「猿見石山」という自分の知らない山に続く道らしい.その山までの距離はわからないが,今回のように智者山を経由せず,天狗石山直登ルートを登れば,自分も猿見石山に行くことができるかもしれない.果たしてそれだけの価値がある山なのか?
下山後,林道を歩いている時に刈払をしていた地元の方に出くわし,30分ほど立ち話をした.やはり限界集落ということで,過疎は深刻のようだ.茶畑で生計を立てていくことも難しくなってしまった今,山で生きていくためには何か新しい地場産業が必要なのかもしれない.人影の消えた八草を後にして,少しうら寂しい思いがした.
智者山山頂には,そこからすぐに到着した(CT:5分).広葉樹を主体とした林の中にある平坦な山頂で,風通しも良く,少しだが眺望もある.ありがたいことに丸太を四角形に組んだベンチすらあった.虫も少なめで,気持ちの良い場所だ.
この時,時計は10:15を示していた.自分はこの山頂がかなり気に入ったので,本日はここで終わりにしようかと本気に思った程だった.そう思った理由は実はもう一つある.
標高が1291mと,普段登る山よりも低めであるにもかかわらず,疲労感がかなりあったためだ.ただこの時点では,計画ギリギリで天狗石山山頂には間に合うはずだった.自分は決断を迫られた.
休憩を取りながら漠然と思いを巡らせたが,結局,智者山山頂では,15分ほど休憩し.そのまま天狗石山に向かうことにした.面白いことに,(またこれはよくある事なのかもしれないが)疲労感そのものが,自分を先へと進ませた.もしここで撤退したら,天狗石山には再び同じルートで登ることになり.この疲労感をもう一度味わうことになる.それが嫌だったのだ.その時には,「この近辺の山々は本日で終わりにしたい」という思いが確かにあった.
智者山山頂から先ほどの分岐点まで下り、そこから尾根道を歩いて行く.尾根は広いが,道がはっきりしている上に,樹の幹に塗られた派手な赤ペンキがずっとガイドしてくれるため迷いはない.アップダウンも少なく,展望こそないが広葉樹の中を気持よく歩いていくことが出来た.
1時間近く歩いたところで,天狗石山という名前の由来となった「天狗石」への分岐に出た.天狗石をみるためには,尾根から少し下る必要があり,標識には+5分のロスと書かれていた.少々迷ったがせっかくなので「天狗石」を確認してみることにした.
山腹の道をしばらく歩くと,官製の説明板とともに,コケで覆われた天狗石群が斜面に現れた.すでにネットで写真は見ていたのだが,大体イメージ通りの石群だった.昔の人には,これらの石の存在が不思議に思われたのだろう.ただ自分は今までの山行において,これよりも規模の大きな同様の場所をいくつか知っていたため,写真を撮るとすぐにそこを後にして,山頂に向かった,
10分ほど登ると天狗石山山頂に出た.展望はなく,広葉樹の中にそれはあった.ありがたいことに,山頂にあった三等三角点標石の手前に,コンクリ製のベンチが備えられていた.早速それを使わせてもらい,休憩をとった.
天狗石山山頂はやはり虫が多い.植生のためなのか,コバエよりもアブのほうが多かった.尺取り虫も多く,ザックやポーチによじ登ってくる.セミもけたたましく絶え間なく鳴いている.山頂の気温は20度ほどだったが,風が吹いているため,汗が冷えて寒く感じた.例によって雨具を取り出し,防寒する.
山頂で1.5時間休憩したのだが,今回は都合により,睡眠時間が1~2時間ほどだったため,うつらうつらベンチに座りながら居眠りをしてしまった.標高の割に疲労感が強かったのは,この睡眠不足のためだったのかもしれない.
休憩後,下山を開始する.この山頂近くには展望地があるので、そこを経由することにした.展望地までの道も,赤ペンキと標識が引き続きガイドをしてくれる.
その展望地は,反射板の設置されていた場所にあった.残念ながら思ったより,展望は開けていなかった.反射板によって展望が遮られている部分も多いような気もする.ただしこの展望地への道は,ここで終わってはいなかった.
標識が立っていた.「猿見石山」という自分の知らない山に続く道らしい.その山までの距離はわからないが,今回のように智者山を経由せず,天狗石山直登ルートを登れば,自分も猿見石山に行くことができるかもしれない.果たしてそれだけの価値がある山なのか?
下山後,林道を歩いている時に刈払をしていた地元の方に出くわし,30分ほど立ち話をした.やはり限界集落ということで,過疎は深刻のようだ.茶畑で生計を立てていくことも難しくなってしまった今,山で生きていくためには何か新しい地場産業が必要なのかもしれない.人影の消えた八草を後にして,少しうら寂しい思いがした.