2016年11月9日水曜日

柏尾→柏尾峠→高山(836m)

★概要

  • 日程:2016年11月4日
  • 天候:快晴,高山(836m)山頂気温: 11.8℃,風ややあり
  • コースタイム
    自宅発4:30→長尾着5:30→農道始点着5:40→道迷い20分→登山口着6:00→柏尾峠着6:20→休憩・撮影15分→柏尾峠発6:35→農道着7:45→展望地着7:55→休憩・撮影5分→展望地発8:00→紅白高圧線鉄塔着10:00→撮影・休憩20分→紅白高圧線鉄塔発10:20→高山山頂着10:23→休憩2時間→高山山頂発12:20→農道着13:40→柏尾峠着14:40→登山口着15:00→長尾着15:15→帰宅準備10分→長尾発15:25→自宅着16:20
  • 総行動時間:9.5時間(自転車:1+1時間,山行:4.5+3時間) 
  • 総休憩時間:3時間
  • ルート:松浦理博「安倍山系 上」,柏尾山稜ルート①→高山ルート③

★写真(306枚)

★動画(24本)


★ レポート

前回の訓練から2週間が経過してしまった…

あれから気温は随分と下がり,冬も間近に感じられるようになった.山行にはいい季節なのだが,自分にはまだまだ体力的に不安がある.そこでやはり前回と同じように,安全に単独行トレーニングのできる山に行くことにした.例によって,松浦理博「安倍山系」3分冊をめくり決定したのが,以前から気になっていた高山(836m).

静岡市には「高山」と呼ばれる山が3つある.一つは竜爪山の西側,水見色にある高山(717m).別名「牛ヶ峰」.この山頂付近には「静岡市高山市民の森」があリ,松浦理博「安倍山系 中」によれば標高600mあたりまで自動車で行くことができるようだ.自分はまだこの山に上っていない.それは標高が低いだけでなく,公園的なイメージが強いから.

二つ目は,自分がよく練習に行っている徳願寺山の西隣にある高山(376m).別名「梵天山」.こちらは歓昌院坂から何度か上ったことがある.頂上は杉林の中で展望はないが,丸太ベンチと記帳可能なノートの入った木製ポストがあったと記憶する.

3つめは竜爪山の東側にある高山(836m).以前,いわゆる「旧道」から竜爪山(薬師岳)に上る途中にある穂積神社についた時,しばらく付近を散策したのだが,その時に発見した登山口があった.



それは穂積神社の近くを走る林道炭焼平山線からの取り付きで,標識には「高山・帆掛山登山口」と書かれていた.この時初めて,自分は3つ目の「高山」の存在を知った.

ちなみに登山口には,私製と思われる案内板もあった.


この案内図によると,この登山道は帆掛山経由で高山に至るらしい.しかしちょっと腑に落ちない.帆掛山と言えば,梶原山のすぐそばにある低山ではなかったか?

例によって「安倍山系」を調べてみると,確かに帆掛山(304m)は梶原山の隣りにあった.この案内図で「帆掛山」とされているのは,地形図の848m無名峰のように見えるが,地元では「帆掛山」と呼ばれているのだろうか?

それはさておき…

この登山口発見以来,いつかはこの高山に登ってみたいと思っていたが,その後なかなか機会を得られず,未踏となっていた.安倍山系によれば,柏尾峠から登山道は,前回同様,静岡市認定「みどりの道」となっている.当然,危険はないだろうし,CTも3.5時間程度ある.ふむ,良い機会が与えられた.

ところがどうしたことだろう.出発予定日の4日は前日から仮眠すら出来ず,結局,睡眠時間0のまま,予定を繰り上げて午前4:30ごろに自宅を出ることにした.日の出は午前5:45ごろなので,おそらく夜明け前に登り始めることになるだろう.ヘッデンは必須だが,すぐに夜も開けてくるはずだ.

自転車で竜爪街道(県道201)を北上し,駐輪予定の長尾川の堤防付近に到着したのは,予想通り1時間後の5:30.ヘッデンを準備し,竜爪街道から分岐している農道を目指して舗装路を歩き出す.

竜爪街道から農道への分岐はすぐに分かったが,普段,竜爪街道を自転車で走っているときには,こんな分岐があったことに気が付かなんだ.道ではなく民家の一部に見えていたようだ.農道脇の民家の番犬に執拗に吠えられながら,電灯のない真っ暗なコンクリートの坂を,ヘッデンの灯りを頼りに上っていく.

少し空が明るくなってきた頃,自分は農道の終点,行き止まりにぶつかった.記憶していた「安倍山系」の記述によれば,道の右側に取り付きがあるという.茶畑は確かに道の右側にある.とすると,この茶畑から取り付くのだろうか?

とりあえず茶畑脇のぬかるんだ道を上ってみるが,茶畑上端で行き詰まってしまった.茶畑上端部だけでなく横脇も探索してみたが,道らしきものはやはり見当たらない.取り付きはここではないようだ.第一,茶畑から登るのであれば,「安倍山系」にそのように書かれているはずじゃないか.

茶畑からのアプローチは諦めて,すごすごと農道に戻る.どうやらここに来るまでに取り付きが存在していたらしい.そこで民家のあるあたりまで,ヘッデンで斜面を照らしながら下ってみた.が,やはり見当たらない.ふむ,もしやすでにヤブに覆われて廃道になっているか?

ちょっと胃に重いものを感じながら,持参しているタブレットにコピーしておいた「安倍山系」の当該箇所の記述を再度読み返してみる.問題集の答えがわからなくて,ついに回答をこっそり見てしまった学生の感じる苦い味わい.
「T字路で直進した20mほど先で右後上への山道」
とある.ふむ…そもそもT字路とはどれなのだろう?この農道は沢沿いとなっており,それは左にある.その沢を渡るコンクリ橋が存在するから,これがT字路なのだろう.ではその20m程先に取り付きが…,少なくとも取り付きの痕跡はあるはずじゃないか!

ヘッデンでじっくりと右の斜面を照らしつつ,目を凝らしながら再び農道を登り返していくと…ありました!

ヘッデンの光量が足りず,暗くて斜面の様子がよく見えないが,取り付きらしい踏み跡を発見した.この取り付きはあまり有名ではないらしく,標識はおろか,マーキングテープ類も一切ない.「みどりの道」ではないので,至極当然といえば当然か.下山後に撮影したので,参考までに.



これで撤退せずに登れる…正直ホッとした.しかし問題はこの後,薮との激闘が始まるかどうかだ.まあ,とにかく上ってみよう!

少し上ってみると肩透かしを食らった感じがしてきた.たしかにやや荒れている部分もあるが,道筋は明瞭そのもの.樹林が濃く空が全く見えないためヘッデンは必須だが,薮っぽくもない.つまりこの道は生きている.地元の方が生活道として利用しているのではなかろうか?

20分ほど山道を登ると柏尾峠についた.車道の末端のようなアスファルト舗装された場所で,駐車スペースやベンチもある.おお,折しも眼前の展望の中を,朝日が登ってくるではないか.さっそく撮影に取り掛かるべし.


朝日の写真を何枚か撮り,峠の石碑等を撮影した後,被写体になるものがないか,付近を散策してみた.その時,視界の端を動く「ちいさなもの」に気づいた.よくよくみれば道路の端を,二羽の鶏が地面に落ちた種のようなものをついばみながら,ゆっくりと歩いてくる.放し飼いにされている鶏なのだろうか?ちゃんと交通安全を考えているのか,道の真中には出てこない.賢い奴らだ.


賢い鶏を撮影して,再び登山口となる石碑の前まで戻り,出発の準備をしていると,先程の二羽の鶏も石碑の方に近寄ってくる.朝日に反応したのか,一匹が「コケコッコー!」と素っ頓狂な雄叫びをあげた.元気がいいな!

やがて鶏たちは峠の隅に置いてあったチリトリのようなものに顔を突っ込み,何かをついばみ始めた.水なのか?餌なのか?もしかすると,この鶏たちは毎朝ここまで餌を食べるために,上ってきているのかもしれない.そのようにしつけたとしたら,飼い主の方,スゴイ.


さてお食事中の鶏たちを後に残して,自分は石碑の横の石段を上り,山道へと入った.ここからは静岡市認定路「みどりの道」だ.この登山口には,すでに幾つもの標識があり,その中のいくつかは「清水猟友会」によるものだった.猟友会作成の標識を見たのは,これが初めてだ.この猟友会標識は,その後も重要な分岐においてたびたび出現する.感謝.

さてしばらく道なりに杉林の中を行くと分岐点についた.もちろんここにもしっかりと清水猟友会標識がついている.その標識は左を指し示しており,自分が採用した「安倍山系」の柏尾山稜ルート①に合致していた.右に行けば,どうやら尾根に取り付いて,尾根道を行くようだ.それは同書の柏尾山稜ルート②にあたる.迷うことなく,計画通りに左を選んだ.みどりの道を選んだのだ.

計画でも左,標識も左.だから何も問題はないはずなのだが,しばらく歩いていると,ある「問題」が発生した.トラヴァース道であるためアップダウンがないうえに,植生も主に杉・桧・竹の単調な植生で,花もなく,また日もさしてこず,薄暗い.そのため睡眠不足もあり,歩いていても眠くなってしまうのだ.みどりの道とは言え,細めなところもあり,注意散漫になれば滑落の恐れも出て来る.歩きながら「さてどうするか?」と考えた.

歌も候補に上がったが,とりあえず歩くテンポを上げて,心拍数を上げることにした.これでちょっとは目が覚めるかもしれない.ただこうなってくると,山行というより運動・トレーニング近い.この前の夜間訓練のような…

暫くそんな感じでせかせかと歩いていく.やがてちょっとした息抜きの小展望地が現れ,それを過ぎた後,再び杉林に突入.そこにあったやや細めのトラヴァース道を前進していくと,ようやく緊張感を取り戻せる場面に出くわした.


やや古めの湿った木橋が現れたのだ.ぱっと見たところではやや腐っている部分もありそうだった.以前ある山で,このたぐいの橋を渡った時,橋の板が腐っていて,踏んだ場所が折れて,踏み抜きかけたことがあった.この橋と同じように短い橋だったので,その時は,踏んだ勢いで前へつんのめり,危なく顔面から地面に着地しそうになったが,何とかそれは免れた.それ以後,この手の橋は気を抜かず慎重に渡ることにしている.

…若干の緊張感は伴ったが,問題なく橋は渡ることが出来た.これで少し気分がリフレッシュされた.感謝.

ところが実は,橋はそれだけで終わらなかった.さらに杉林の中を行くと,今度は別のタイプの橋が登場.


鉄パイプでできた10mほどの橋だ.その右側には崩落した木橋が無残な姿を晒している.鉄パイプ橋の方は左端が杉を支柱にしてロープで吊ってある.手作り感のある,なかなかこった出来栄えだ.さっそく慎重にその橋を渡り始めると,意外に揺れてくれる.鉄パイプと言っても,この長さだとそれなりにたわむようだ.右側には何もないので,落差は大したことはないものの,バランスを崩すと落ちてしまう可能性はある.慎重にバランスを取りながら時間をかけて渡り終えた.

後もう一つある.最後に出てきた木橋は,この2つの橋を足して2で割ったような橋だ.


橋の左側にロープがある3mほどの短い木橋.こちらは右側が斜面なので,第2の橋のように右側に落ちることはないが,高度はこちらの橋のほうがありそうだ.やはり慎重に渡っていく.

これら3つの橋にちょっと刺激によって,少し眠気も冷めた.歩いていたトラヴァース道は,やがて尾根道と合流.尾根筋を歩く感じになった.それとともに日がさしこみ,視野が明るくなっていった.

さらにしばらく行くと斜面が放置茶畑になっている場所に出た.清水方面の展望が大きく開けている.清水港の様子もよく見える.左の奥に数本の「角」が生えている山が見える.これがどうやら「山原中継所」らしい.


このように今回のルートは,基本的には単調なのだが,展望が所々にあるのはありがたい.この後農道に一旦降りるのだが,その農道からの展望もなかなかのものだ.静岡市の中心部はもちろん駿河湾まで見渡すことができる.


展望の良い農道から再び山道にとりつくと,そこからは展望のないますます単調な杉林を行くことになる.尾根に乗っているのでアップダウンがあり,それなりの負荷もあって眠くはならないのだが,今度は精神的にこたえる.分岐らしき分岐もなく,みどりの道らしく道筋は明瞭で細くもなく,頭も集中力も注意力も使う必要はない.ただただ体力だけが要求されてくる.それが2時間続いた…

あと数十分で高山山頂というところまで近づいた時,自分は気になる分岐に到達した.そこには静岡市の黄色いプラ標識があリ,直進を指示してたが,右折する分岐はどうやら高圧線鉄塔の巡視路らしかった.もしかしたら高圧線鉄塔からは展望があるかもしれない.高山山頂には展望がないようなので,ここはとりあえず高圧線鉄塔に立ち寄るために右折してみた.

その高圧線鉄塔は,今まで見てきた鉄塔の中でも最大級の高さのものだった.航空機に注意をうながすためなのだろう,めでたく紅白に塗られている.やや迫力に圧倒されながらその直下まで枯れ草の斜面を上っていった.

鉄塔直下は展望が開けていた.やや鉄塔の足が視野をさえぎり邪魔ではあるが,静岡市中心部から清水方面まで見渡すことができる.日差しもあり,とても気持ちのよい場所だ.


ボーっと遠望していると「ここが目的地でもいいな.高山山頂は立ち寄る程度でもいいかもしれない」ふとそういう思いが湧いてきた.が,すぐにそれを打ち消した.たとえ展望のない杉林の中の山頂だろうが,計画上の目標とした山頂に一定時間,居続けること.それは自分にとっては,重要な意味があるように思えたからだ.その意味の実体は何なのか?正直,自分でもよくわからないが…

鉄塔直下で,休憩&撮影にしては長めの20分という時間を費やした後,再び高山山頂を目指して歩き出した.といっても,すでにここは山頂直下にあたり,そのまま上っていけば数分で到着するはず.先程の「みどりの道」まで下るのも面倒に感じた.休憩時に発見した近くの中電巡視路標識は山頂の方向を指している.おそらくこの巡視路を辿っていけば山頂につけるだろう.

巡視路を登ること数分.案の定,杉林の中にある高山山頂に到着した.やはりほとんど展望はない.樹間から僅かに,先程の鉄塔からの展望の「欠片」が見えるぐらいだ.あまり日がさしこんでこない上に,やや風もあり,思っていたよりかなり寒い.すぐにザックを開けて,上着と雨具を着込み,僅かな日向に陣取った.

あたりを撮影をして,スープを作り,コーヒーを飲み…

そんなことをしながら自分はこの山頂に2時間とどまった.予定より30分もオーバーしてしまったのだが,どうしてオーバーしてしまったのかが,よくわからない.もしかしたら途中で居眠りをしていたのかもしれないが,記憶にない.



山頂でスープを作っている時に,背後から熊鈴の音が近づいてきた.振り返ると,ハイカー風の老夫婦がこちらに向かって歩いてくる.金剛杖を持ったご主人.その後ろから奥さんらしき方.こんな展望のない杉山のてっぺんに登ってくる人がいるとは…ちょっと意外だった.

挨拶をして少しお話をした.ご主人いわく,山にあまり登ったことがなく,近くに車を停めてきたとのこと.なるほど見た感じ,ちょっと軽装に見えたのはそのためだったのだ.ご夫婦が上ってきたルートは「安倍山系」高山ルート①で,自動車で林道の終点まで来たとすれば,ここまでのCTは30分程度となる.確かにちょっとしたお散歩や体力づくりには良いかもしれない.

老夫婦に展望地である鉄塔のことを話すと,お二人はそちらに歩いて行かれた.それから15分ぐらい経った頃だろうか,お二人が引き返してきた.「どうでしたか?」と尋ねると,「こういう場所に慣れていないので大変です」とのことだった.鉄塔のある斜面がきつかったのかもしれない.ご主人はこの後,ピストンで車に戻るつもりだったらしいが,一応自分が「ここから穂積神社に行くこともできる」と説明すると,奥さんはそちらにも行ってみたい様子.奥さんのほうが元気なのかもしれない.しかしご主人は「車はどうするの?」と提案を却下.自分もそれに賛成し,お二人はそのままやってきた吉原方面への道を戻っていかれた.自分はいつもの最後の挨拶をお二人に送った.「お気をつけて」

確かに高山山頂から穂積神社への道も静岡市認定「みどりの道」であり,道迷いの原因となる分岐や危険箇所はほぼないはずだ.だが油断はできない.山に関する知識がなかったり,装備を持っていない人,もしかしたら地形図やコンパスすら持っていないかもしれない高齢者の場合,たとえ「みどりの道」でも長く歩くのはちょっと怖い気がする.最近の静岡市の遭難騒ぎの殆どが,高齢者であることも頭をよぎった.そう,その事故は,この山の隣にある竜爪山で起こったのだ.

帰宅後,強いアレルギー症状が出て,しばし苦しんだ.喉の痛み,目のかゆみ,くしゃみ,鼻水,顔の腫脹.今回は汗をあまりかかなかっため,タオルで顔もふいておらず,花粉を皮膚にすり込んでいないはずなのに.確かに杉林が多かったし,林の中でも風も少し吹いていたためなのだろうか?睡眠不足も影響しているのかもしれない.

ただもう一つ原因として考えられることがある.帰宅時,自転車に乗りながら,本日の負荷が予想よりも少なかったのが気になりだし,せめて自転車を飛ばして,負荷を稼ごうと考えたのだ.ヒルクライマーではないが,何度か,上り坂をてっぺんまで速度を落とさぬように駆け上がったりもした…

アレルギーだけでなく,いつもよりも早めに筋肉痛も出始めた.疲れも普段より強めに現れた.単純に体力が低下しているのかもしれないが,逆に自転車が効いてしまったのか?よくわからない.

とりあえず次回も試行的に1000m位の山を上ってみたいと思っている.